サイドテーブルに置いてあるタバコを手に取って吸い始める流が一旦会話を止める。


でも煙を吐くと、また口を開いた。




「仲間とか集団とか、んなもん俺には必要ないし
喧嘩出来ればそれでよかった」


「...」


「二年前くらいに圭がな、俺に喧嘩売ってきたんだよ、しかも1人で。」


「...」


「集団で俺に喧嘩を売ってくるやつは死ぬほどいたが、1人で来たやつは初めてでな。
もうおかしくて笑いが止まらなかったぜあの時は」



「...うん?」



「もちろん俺の圧勝だったんだけど。
昨日の敵は今日の友つーだろ?
あれから圭と絡み始めて、1年後。
あいつが暴走族の総長してるって初めて知ったわけ」




圭...本当に暴走族の総長やってたんだ。



「でも、今まで暴走族の『暴』さえ話題にすら挙げなかったあいつが、いきなり『暴走族やらねーか?』って誘ってきて、もちろんその時は断ったけど。」



「あまりにもしつけーから、"総長"だったらやる。って、意地悪なこと言ったんだよ。
そしたらあいつ簡単にその座を譲ってきたんだぜ?
普通そこまでするかよ、と思ったけど」



「"強い奴が上に立つべきだ"って。
そう言われて正直圭のこと馬鹿にしてな、またまた普通そこまでするかよって思ったわけ。」




懐かしそうにあの時のことを話す流は
透明な灰皿にタバコを押し付けながら、笑っていた。





圭とそんな事があったなんて...


色々あるんだね、誰にでも。