「いいの?あんな簡単に帰しちゃって」 

流の隣に立って、少し意地悪な言い方をすると。


「いいさ、もう終わったことだし。
 若葉の自信もプライドも、もうズタボロだ。
 これ以上手を出してくるとは、思えない」


流はタバコを咥えたまま、私の頭に手を置き、瞼を伏せ柔らかい口調で言う。


流が言うんだから間違いない、と。

そう思ってしまうのは、なんでだろう…。



「流」

安心したのも束の間。

低い声が、やけに倉庫内に響く。


後ろを振り向けば、圭がいて。
こちらを見ている圭の目は、どこか寂しそう。



「圭、悪かった。
 夜季を抜けると言っておいて、結局お前の力、借りちゃったな」


「別に、そんな事はどうでもいい。
 俺は、そんな事よりもーー……」


圭が流の目の前に立ち、怖い顔で胸ぐらを掴んだ。


まさかここで喧嘩しちゃうの!?と、焦り始める私の心配をよそに。



「夜季辞めちまったからって……俺を頼らないなんて、言うんじゃねーよ…」


「…圭」


「俺ら、これからも関わっていくんだろ?
 そこに夜季は関係ねーし。
 俺はお前の友達だろ…違うか?」



流が圭の問に、首を横に振る。



「違わない。
圭がいるから、俺がいるようなもんだろ。
 俺の自由は、お前が居て成り立ってんだからよ」