数分経って、夭嵐の幹部の1人が、夜季の倉庫にやってきて、若葉と坊主頭を引き取る。
威圧感を与えないために、1人で来たらしい。
それもバイクじゃなくて、車で来たことが、エンジン音の違いで分かった。
「うちの総長と副総長が、勝手なマネしてすみませんでした。」と、その男は確かに言ったのをこの耳で聞いた。
夭嵐にも、まともな人がいたとは。
驚きのあまり口をポカンと開けていると。
「別に気にしてない…つったら嘘になるけど。
お前らの上の奴らがやったことだ。
下の奴らは気にすんな」
流はタバコに火をつけながら言う。
その時の流の男くさい表情に、見惚れてしまう。
夭嵐の幹部の男は、ペコリと流に軽くお辞儀をし、気絶したままの若葉と坊主頭の頬を軽く叩き起こす。
何も言わず倉庫から出ていく若葉の横顔は
光が失われていて、もう言葉を発する力も残ってないみたい。
汚いやり方でも勝てなかった若葉に、この先闘争心が生まれることはないだろう、と。
なんとなく察してしまう。


