掻き集めた花びらを手でギュッと握りしめた流が、滲み出た花のエキスでその手を汚した時。
微動だにしなかった空白の世界が、ゆっくりと動き出す。
その日は結局、父を説得させるまでには至らなかったけど。
家の玄関前まで流を見送ったとき。
何かを決意したまま黙り込み、その場から動こうとしない流を見て、やっぱりちょっとだけ不安になる。
「ねえ...暴走族辞めるって、ほんと?」
張り詰めた空気なんか構いやしないと、口に出した言葉は。
私にとっては嬉しいことだけど
流にとってはとっても大事なことなんだと思う。
だって急に、暴走族の総長を引退するなんて。
自分勝手にもほどがある。
そんなの、流を慕ってる圭にも、突然現れた流を総長だと受け入れてくれた夜季の仲間たちにも
失礼すぎる。
「流、お父さんの言うことなんか...いちいち鵜呑みにしなくても...」
慰めるように流の肩に手を置くと、その手に流の手が添えられ。
不覚にもドキッとしてしまう。
「あいつらには、ちゃんと俺から話す。
それにムギだって本当は、暴走族なんか早く辞めてほしいだろ?」
「...っ、そりゃあそうだけど...っ!!」


