呆気にとられている両親を前に、流はくるりと振り返って、その場にしゃがみ込んでは、落として散らかった花びらを掻き集める。
「そんなに不満なら、辞めてやるよ」
背中越しにそう伝える流に、父は「はあ?」と意味がわからなさそうに呟く。
オシャレな箱に入ってるバームクーヘンは、落としても中身は無事だったけど
甘い匂いが漏れていて、不思議と緊張感を煽っていた。
「適当に生きてきた人生も、暴走族も、刺激的で退屈しなかった喧嘩も、全部辞めてやっからよーー...。
"まとも"って奴になったら、いいんだろ?」
生意気すぎるその声は、どこか自信に溢れていて。
こんな態度で、父が納得するわけないと思ったけど。
流は私なんかより、全然父の性格を見抜いている。
「お前に、出来るもんなら、やってみろ」
キレ気味の父が、今にも切れてしまいそうな頭の血管を浮かばせながら、流の煽りに乗る。
「その言葉、取り消させないからな」
「年上には敬語を使ったらどうだ?くそガキ」
「くそガキなもんで、生憎(あいにく)敬語の使い方わかんねーんだわ」
「...っ、生意気な奴だ」


