ただ走って、ひたすら走って。


泣きたくても泣かないように、唇を噛み締めながら、お店の明かりが消えてしまう前に夜の街を通過した。



そして。



今日の朝見たばっかりのマンションのドアが懐かしく感じるのは気のせいかな?


無意識...いや。
体も...心だって流を求めているみたいだ。



気づけば流が住んでるマンションの部屋の前まで来ていた。


手をグーの形にして、ーーートンっ、と。軽くドアに押し付けると。



カチャ...と静かに開いたドアから明かりが漏れて、涙で潤った私の目を輝かせた。



「ムギ...?
なにしてんだお前、こんな所で...。」


今にも泣き出しそうな私を見て、流が背中を擦りながら部屋に入れてくれた。



靴を履いていない私の足を見て、流はお風呂に先導し、シャワーで汚れを流してくれた。



制服に...少しだけ水がかかる。


そんなのお構い無しに、流は優しく...汚れた私を洗ってくれるんだ。