「ムギはちゃんと...帰る場所もあるし、それに親だって待っててくれるだろ?」


「...」



「俺にはそういうの、ないから」



「...そんなこと...」



「俺の親、連絡もよこさねーし、家にだってろくに帰ってこない。
そのくせ一丁前にお金は振り込んでくるから、俺、バカにされてんだなって思って」



「...」



「どうせ自由なら、あの家からも離れることにした。
一人暮らしすると連絡はしたが、あっさりと承諾しやがって...あいつら、そのくらい俺に無関心なの。」




"ムカつくだろ?"





笑いながら言う流。


全然笑い事じゃないのに...


私が傍にいても
流は満足していなかったんだ。



親からじゃないと受け取れない愛だってあるから。


同情しちゃいけないのに
流の気持ちを考えたら涙が溢れてきた。


四六時中、親と向き合える時間はあるのに。
それなのに、親の愚痴ばっかり言ってる私を見て、流はどいういう顔をしてればいいのか分かんなかったんだと思う...。




「ごめんね...流」



「いいよ、別に。
つかお前、ちゃんと親とは仲良く暮らしてんのか?」



「...まあ、普通かな」



「普通が一番だな、おう、よかったじゃん」