「こんな状況になっても逃げようとするなんて。
すごいな、紬ちゃん」
「...っ!?」
わざとらしくパチパチと手を叩く音が何もないこの場所で響く。
暗いモヤが段々こっちに近づいてきて正体を表した。
私を拉致った男だ...。
もしかしてずっとこの部屋に居たの...?
人の気配なんてしなかったのに...一体何者?
「このロープ、解いてくれない?」
「くれないくれない。
解いたら逃げるでしょ?」
「...」
「まあでも、いくらロープを解いたからって逃げられないけどな」
「...っ...」
確かにこの男の言う通り...ロープを解いても逃げれる気がしない。
ドア開けても外にこの人の仲間が居たらすぐ取り押さえられちゃうし...どうしよう。
「変なことしない方がいいぜ?」
「...」
「お前の恋人、神庭流だっけ?
そいつに連絡しといたから。」
「...は?」
「大事なお姫様、連れ去ちゃいました〜って。
そしたらウケるぜあの男。
すぐに電話切りやがった」
「...っ...」
「グッ...ククッ、見捨てられたかもな紬ちゃん。
まあそんなもんよ、暴走族やってる男なんて。
足でまといになる女なんか必要ねーもん。
あんな大事にされてんの小説の中だけだから」
「...」
「いい加減、目覚ました方がいいぜ?紬ちゃん。
お前、裏切られたんだよ」
「...そんなことっ...!」
「ない。って言える?
別に俺、神庭流に用があるわけじゃないし、来ても来なくてもどっちでもいいんだけどね」


