うん、どうしよう。


「ない、もん」なんて震えた声でバレバレの嘘ついて。


今完全にチョコレート渡すタイミング逃してしまった。



...私のバカ!!




「あっ、そういえば今日さ」


「うん?」


「他校の女子から何かよくわかんねーけどチョコレートもらってさ。
ムギも食う?」




パキッと流の口の方から鳴る、チョコレートの割れた音。



この男...いったいどこからそんな高そうなチョコレートを出してきたのか...



ていうか、ものすごくショックなんだけど...



「りゅ...流のバカ!!」


「安心しろよ、お前のもちゃんと残してるぜ?
いっぱい貰ったし」



「そういう意味じゃなくて...っ!!
なんで知らない女子から簡単に受け取るの!!
今日何の日か分かってる!!??」



「んー?今日なんかあったっけ?」




駄目だこの男、まるで分かってない


察しもしない



こんな大事な日に、流の鈍感さが憎い!!!!




「うっ...うわーーーん!!!!」



「えっ、なにムギちゃん!!
なんで泣くんだよ!!!!」


「やだもう...っ、ぐすっ、だってぇ...」




突然泣き出す私に流が肩をビクつかせて驚く。



流れっぱなしの台所の水と私の泣き声で、色々と音が混ざりあって流は横に手を振りながら余計慌てていた。






ドキドキしながら買ったんだもん。



我ながら気持ち悪いくらい乙女になって
バカみたいに浮かれてて、緊張しながら何回もチョコレート渡す練習までしたのに...っ。



私より先に他の子からチョコレートを受け取るなんて




流なんて...


流なんて...