楓摩side

あ……………………俺、またやっちゃった……

ドサッと朱鳥がベッドに倒れる。

…俺、何してるんだろう…………

朱鳥の言葉が頭の中で反響する。

"もう、私を1人にしないで"

そうだよ……

何やってるんだよ…………俺……

朱鳥の苦しむのを見たくない……って、それが一番、朱鳥を苦しめてるんじゃん。

朱鳥は、昔から一人の時はとても弱かった。

俺が一緒に居てやると、安心して、嫌なことも頑張ってくれた。

…でも、俺がいない時は、ずっと魘されていたり、泣いている事が多かった。

…………そうだ…きっと、朱鳥が一番恐れていたのは、痛みでも苦しみでも無く、一人の寂しさだったんだ。

それを、俺は朱鳥に与えてしまった。

本当、なにやってんだ……

朱鳥、最近話してくれなかったのも、朱鳥なりの気遣いだったんだよね……

"やっぱり、私、迷惑だった!?"

朱鳥は、1人になるのが嫌だったから、俺に嫌われないようにって必死に我慢してくれてたんだよね……

どんなに辛くても、頑張って、俺に笑顔を見せようとしてくれていた。

…なのに、なんで俺はこんな勘違いをしてたんだ。

"朱鳥が我慢してるのは、俺が頼りないから。"

違う、本当は俺にもっと甘えたかったはず。

"俺のせいで、朱鳥が苦しむ。"

違う、朱鳥は、俺といる時こそ、幸せそうにしてくれていた。

"俺のせいで苦しむなら、俺は朱鳥と距離を置く。"

違う、朱鳥は…朱鳥は、もっと、俺に近くにいて欲しかったんだ。

………朱鳥は、大人になって科が変わってしまったから、俺が朱鳥に接してあげられる時間も減った。

子供の世話もあるから、なかなか夜も一緒に居てやれなかった……

朱鳥は、それが寂しかったんだよな……

それで、朱鳥は、俺がなかなか一緒に居てあげられないのを、"自分のせいで楓摩に迷惑かけてる"って思ってたんだ……

なんだよ……

冷静に考えれば、わかる事じゃん……

なのに、今更…………

俺が朱鳥を守っている気になっていた。

だから、俺が頼りないから…って凹んでいた。

でも、本当は、俺を守ってくれているのは朱鳥だった。

俺が最近、忙しいのを見て、気を遣ってくれていた。

そして、俺が疲れたような、悲しいような顔をするから、自分のせいで楓摩に迷惑かけてる…って思ってしまった。

……結局、俺が朱鳥を追い詰めていたんだ…

俺は、倒れてしまった朱鳥の手をそっと握った……

そうだ、俺たちはふたりでひとつ。

…二人三脚で頑張ろう。ってずっと昔に決めたじゃん。

ごめんね………………

ごめんね…朱鳥………………

俺、なにも朱鳥の事、わかっていなかった。

わかった気になって、朱鳥を傷つけていた。

……本当に謝りきれない…

ごめんね……

ごめんね朱鳥…

ごめん……