「とりあえず送るよ」


「え……聞かないの?」


「話せるの?」


「…………」




無言になった琴乃の頭をぽんぽんとする。


俺を見上げる琴乃に微笑んだ。






「もう帰ろう。
でもあまり近づかないでほしいな」


「うん……」




頷いた琴乃と手を繋ぎ、再び琴乃の家に行く。


その間、微妙な空気が流れていた。




琴乃は気まずそうで、俺は不機嫌になって。




琴乃に元カレ。


ちょっと……いや、すごく嫌だ。





『また会いに行くよ。
今度こそ離さないから』




帰りの電車で小野寺の言葉を思い出す。


琴乃だけは譲れない。



絶対に渡さない。




俺だって、手放してなんかやんないから。