あの会話から後ろの席の男子、六堂魁斗と少し仲良くなった琴子


だが何か変わった、というわけはない


いつも通りひとりぼっち


「はぁあ…」


昼休み


1人で裏庭の誰もいないところでお弁当を広げる琴子


裏庭はちゃんと管理されていないのか木が生い茂っていた


生徒はここを不気味がりあまり近寄らなかった


その場所へ琴子は毎日いた


「友達作る前に夏休みに入っちゃうよ〜」


7月半ば


琴子が退院して学校に通い始めてもうすぐで1ヶ月


未だ友達は出来ず


六堂とは何かと話すことは増えた


しかし友達、と呼ぶには少し違う感じだった


言うなれば知り合い


この言葉がしっくりした


「なんか女子からは敵意むき出しだし、なんでだろう」


それは六堂が原因でもあった


六堂は顔が整っている


いわゆるイケメンである


そのイケメンが気にかける女、林道琴子を女子は嫌っていた


普通ならば琴子に嫌がらせをする


しかし、それをしないのには理由があった


ある時1人の女が琴子に嫌がらせをしようとした


しかし出来なかったのだ


その子は金縛りにあい、呼吸ができなくなるような圧迫感を感じた


まるで猫に睨まれた鼠の気分だったらしい


そこで他の女が嫌がらせをしようとした


しかしその女も、次の女もまるで呪われたかのように同じ症状になった


そこから琴子は女子から怖い対象となった


それを琴子は知らない


「げ、あと15分で授業はじまるじゃん」


食べ終わった弁当を片付けてよっこいしょと腰をあげる琴子


その時視界に入ったのは真っ白な猫


「猫!」


琴子はにぼしを出す


どこでもにぼしを出せるようにスカートの中に小袋に入れて常備していた


「ほらほら〜にぼしだぞ〜」


しかし猫はじっと座って琴子を見つめる


「ん??生きてるよね?」


そう言い猫に近づく琴子


「あれ、この子」


その子の瞳はオッドアイだった


「綺麗な目をしてるね〜美人さんだ」


ふふっと笑みを浮かべる琴子


「ほぅ、なかなか良い子じゃないか」


「え〜?そりゃ猫ちゃんはみんな可愛いと思うよ?」


「さすがは主人が選んだ嫁なだけあるじゃないかい」


「嫁だなんて〜え?え!?誰が話してるの!?」


ふと現実に戻る琴子


あたりをキョロキョロと見渡すが誰もいない


いるのは目の前の猫のみ


「ほれ、ここじゃここじゃ。お主の前にいるだろう」


「ひいいあああああ!」


「そんなに驚くでない。ただの猫だろう?」


「いやいや!猫はしゃべりません!!」


「面白い娘じゃのう」


猫はクツクツと笑う


その姿はとても上品だった


「おや、そろそろちゃいむが鳴るなぁ。放課後ここに来られよ。主の嫁よ」


「え、嫁?」


「よいか?」


「は、はいい!」


琴子は脳処理が追いつかないまま返事をしてその場にへたり込んだ


猫はその間に茂みへと姿をくらました