当時宗介は猫又ではなかった


あと少しのところで猫又となり、猫の長となるはずだった


しかし運悪くいじめっ子に捕まってしまい猫又になる夢を諦めかけていた


猫又になれば人の身になることができる


そして猫住町の主として過ごすことができる


そう先代は言っていた


「こいつのしっぽみてみろよ!2つに割れそうだぜ!」


「うぇーきもちわりぃ」


あぁもうだめだ


そう悟っていたときだった


「やめなさいよあんたたち!!」


未来の嫁、琴子に命を救われたのだった


「う、うるせー!」


「ことこのくせに!」


「なんですってー!」


琴子は勇ましかった


猫の自分を助けるために体を張ってくれた


「(あぁこの子はなんて綺麗なんだろう)」


宗介はそう思った


「さぁ、もうだいじょうぶよ」


琴子はにこっと笑い猫を撫でる


「ニャーオ」


「ふふ!綺麗な白色の猫ちゃんなのね!」


大人になったらとっても綺麗なんでしょうね!


琴子のこの言葉が宗介にはとても嬉しかった


猫又になるのは限られた者だけ


その中でも宗介は1番期待されていた


特に先代からは口うるさく言われていた


「お前は兄弟には劣る。だが、お前しか次を継ぐものがおらんのだ。必ず猫又になるのじゃ。よいな」


兄弟たちは皆猫又になる寸前に事故や病気で死んでいた


皆仲が良かった


「お前の毛は綺麗だからな」


「お前の毛はお母さんと似ているよ」


と兄弟からは言われていた


もう、二度と聞けないと思っていた言葉だった


宗介は自分の頭を撫でる琴子を愛おしいと思った


「(猫又になって、抱きしめたい)」


そう強く思ったのだった


宗介は未熟ながらも琴子に1つの呪いをかけた


誰かが琴子を好きにならないように。皆から好かれぬようにしよう、という呪いを…


そして琴子と別れ、数ヶ月のうちに猫又へとなった宗介


「先代お話があります」


「おぉ、なんじゃ」


「僕の嫁は、僕で探します」


その目は野生のギラついた目だった


「…誰に似たんじゃろうなぁ」


先代ははぁ、とため息をつく


「わしは残りの人生を外で暮らす。あとのことは任せたぞ?宗介、」


「はい」


「お主が嫁にしたいと思うおなごがおるのは素晴らしい。しかし人だった場合じゃ、人とわしらの寿命は違う。それを覚悟するのじゃよ」


宗介はそう言われながらも


「はい」


と言い先代を送り出した