ザーッ…

妙な音で目覚めてカーテンを開けてみたら大量の雨が次から次へと降っていた。

「…わ…大雨…」

「亜紀。今日気をつけていくのよ。」

「はーい…」

何だか雨は体調も悪くなるし…陽くんが去っていったのも雨の日だったから思い出しちゃうな…。
まだ起きて少しなのにもう気だるい。今日は一日陽くんだらけなんだろう。

「いただきまーす」

今日はお味噌汁ご飯だった。量が多くて残してしまった。ゆみおばさん大食いだから私のも自然と多くなる。

「ゆみおばさん。今日遅くなる」

「分かったわ。今日はバイトお休みしましょうか?」

「ごめんね。」

着替えて顔を洗ってゆっくりしていたらLINEがきた。

「おはよう!今日熱が出ました…。学校こうたと行ってくれる?」

(ゆな…お休みなんだ…。大丈夫かな?)

「お見舞い行こっかー?」

「移すと悪いからいいよ」

「はーい。お大事に」

そんな会話を繰り返してたら行く時間になった。こうた君とはあまり話してないからどんな話をすればいいんだろ…?

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい!」

「あ、こうた君…おはよう!」

「あ、朝比奈さん…おはよう」

いつまでも苗字呼びにいよいよ吹き出してしまった。それをこうたくんが見たら焦るように顔を触り出した。

「ぼ、僕なにかついてる!?」

「ううん!いつまでも朝比奈さんなんだなって」

笑いながら答える私にこうた君は赤面した。

「あ、いや…いいの?」

「もちろん!」

「…あ、あき…」

「はいっ!」
「うわぁぁあ!」

赤面しながらこうた君はしゃがみ込んだ。

「こ、こうた君!?」

「亜紀…可愛すぎ…」

しぼむような声で言っていたけど聞き間違いじゃなければ…?…いや、んなわけないよね…。

「大丈夫?」

「う、うん!」

眼鏡をあげながら答えたこうた君。その姿は同い年に見えないほど可愛かった。

「ふふっ…こうた君弟みたい」

「お、弟…」

うなだれるこうた君。その姿がもっと可愛くてもっといじりたくなったけど…生憎もう学校。

「それじゃ!今日も頑張ろうね!」

「あ、あの!」

「ん?」

「放課後も一緒に帰って…!」

「もちろん!」

放課後暇だったら嫌だなって考えてた。こうた君と話すのは…今日でわかったよ…!
(すごく楽しい!)
いままでゆなをあいだに挟んでたから分かりにくかったこうた君のメリットが溢れるように伝わってきて話してるだけで楽しかった。
放課後も一緒に帰れたらなって思ってた。
亜紀呼びが嬉しかった。

(…陽くんとの登下校も楽しかった…)
私が感じた時、本、音楽、映画。すべて陽くんを重ねてしまう。
陽くんならああ言うんだろうなって…。
会いたいよ…たまらなく。
好きだと伝えられなくとも、もう一度彼に私の笑顔を心に焼き付けてほしい。

そんな切実な願いは授業と共に消された。
ザーザー降りの雨と共に。

雨は嫌い。
陽くんを強く意識しちゃうから。