「亜紀！早く起きなさい！」

「…んん…」

半分夢の中で彷徨っていた私はまた夢の中に戻ろうと叔母の言葉を無視していた。

「…すー…」

「亜紀！！」

「はいぃ！」

急いで飛び起き、着替えをしてリビングに行った。

「ゆみおばさん､おはよう。」

「亜紀おはよ。早くご飯食べちゃいなさい。」

「ふわぁーい」

あくびと同時にした返事にゆみおばさんはため息をついた。
幼い頃に両親が精神的にやつれて死んでしまい一人ぼっちな私をゆみおばさんは育ててくれた。
身内でもない関係。なのに、こんなに大切に思ってくれているなんて…ゆみおばさんには本当に感謝してもしきれない。

「亜紀？何ぼーっとしてるのよ。」

「へ？何でもないよ。」

ぼーっとなんかしてられない！だって今日から高校生なんだもん！

「行ってきまーす！」

勢いよく飛び出して、意気揚々と歩く。
朝比奈亜紀。背は小さいけれど今日から高校生です！

「あっきー！」

「朝比奈さん。おはよう。」

「あ！ゆな！こうた君！おはよ！」

この二人は私と同中だった友達。こうた君はゆなの双子のお兄さん。

「今日から高校生だよあっきー！やっぱり卓球部？」

「そりゃそうでしょ。朝比奈さんエースだったもん。高校生も負かしたんでしょ？」

「うーん…そうだね！卓球部入ろっかな！ゆなとこうた君は？」

「「断然美術」」

「あはは…」

声を揃えてついでに真顔の表情も揃えて言った。
「二人とも上手いもんね！頑張って！」

「うん！」
「おう！」

ゆなは、スポーツもできるし美術だってうまい。何でもできる完璧少女。
こうた君はスポーツは苦手なんだけどゆなよりもっと美術がうまい。
いいなぁ。私もこの二人みたいに能力があれば…。卓球なんて趣味のうち。その他のスポーツだって勉強だってできない。
（私も二人みたいに凄いのがあれば…陽くんがもう一度会いに来てくれてたのかな…。）
そんなことをぽつりぽつりと考えながら学校へと向かった。