不意にお父さんが腕を伸ばして、あたしの頭を撫でた。


「…暫く考えてくれて構わない。

父さんを……、選ばなくてもいいからな。涼華にも伝えておいてくれ」

「っお父さん、あのね」

「…今、父さんは忙しい、から。じゃあな」


あたしの言葉が届くどころか、聞いてさえ貰えない。

一方的に閉められた扉を見つめて、泣き崩れように膝を地面につけた。


ねえ、お父さん。

今でも覚えていることがあるんだ。


毎年、この寒い季節にお父さんは大きなプレゼントを持って帰ってくるの。

それでお母さんは美味しそうな料理をテーブルに並べて、ひそひそとお父さんと何か打ち合わせをした後、手を合わせて「おめでとう」と言ってくれた。


クリスマスの日は、あたしの誕生日でもあった。


だから、毎年プレゼントは二つ、サンタであるお父さんとお母さんから一つずつ貰えた。