不意に伸びてきた手のひらが、あたしの持っていたココアを掴んだ。


そのままプルタブを引いて開けた。


「俺、坂木 凜太郎(さかき りんたろう)。

好きに呼んでくれて構わないから」

「えっと…じゃあ、凜くん、とか?」



凜くん、省略しちゃったけどいいかな。

男の子―、凜くんが「ふは」と力の抜けた声で笑った。



「うん、初めて呼ばれたけど何かいいね」

「よかった。…あたしは」

「白鈴 絢華、だよね?」

「っへ!? そ、そうだけど何で知って…」

「俺の母さんが回覧板見て知ってたみたいで…」

「そ、うだったんだ…」

「それで、まあ、抱きしめたことを素直に白状したら…教えてくれた。白鈴さんの家の子かしらって」

「お、お、教えたの!??」



驚いて目を見開かせると、凜くんは頭をかきながら「ごめん、つい」と笑った。