駅のホームに着くと、ちらほらと人が見えた。

マフラーに顔を埋めながら改札口を通ると、あまり人のいないところで電車を待つ。


ひんやりとした風が頬を掠めて、ぶるりと震え上がったその時、ぴたりと温かい何かを頬に押し付けられた。


「ひゃっ……、あ、おは、おはよう…」

「ごめん、驚かせちゃったかな。おはよう」



寝癖のついた髪を揺らして笑う男の子が、あたしにホットココアを手渡した。


「昨日のお礼。…急に、抱きしめてびっくりさせちゃっただろうから受け取って」

「え、う、ううん…! ありがとう、丁度寒かったから嬉しいよ?」


ココアを両手で持ってにこりと笑えば、男の子も嬉しそうに頬を緩めた。


「そういえば、その、名前…教えてもらっていいかな?」


ずっと聞きたかったことを口にすれば、男の子は「言い忘れてたね」と目を細めた。