腕を振り払おうとすると、顔を近づけられる。
「形だけでいーんだよ。どうせ、てめーなんかよぉ、平凡でそんなに何かが凄いわけでもねーしさ。先輩と付き合えるだけでも幸せだとか言ってたじゃねーかよ!」
…あたしは、ただあの時独りになるのが怖かった。
「折角てめーのために、この教室で待ってたってのによぉ…幾ら経ってもこねえ。待っててやったことを感謝しろよな? あ?」
先輩が好きだって言うたびに、嘘だと分かっていたけど、それでも嬉しかったんだ。
泣きそうになるのを堪えて俯くと、先輩に顎を片手で掴まれた。
「…てめーを好きになるやつなんて、ただの暇つぶしの野郎しかいねーっての!」
先輩の唇があたしの唇に触れよう―、としたときだった。