突き当たりの部屋に着くと、清水さんが振り返った。
「…有難う、絢華さん」
「えっ…、あ、あたしはその…」
「美湯との会話…聞いてしまって、貴方がそう言ってくれるとは思わなかったわ…」
えええ…!?
あの会話、聞かれていたの!?
「これで少しは美湯も、私に話しかけてくれるかも知れないわ…」
「そ、そんな…もし、余計に仲が悪くなってしまったら…」
「長年…、あの子は誰とも会話をしなかったのよ。ここの園児たちとだって。美湯は殆ど掃除や書類整理だけだったから…」
目を伏せて話す清水さんは「だけど」と言葉を繋げた。
「もしかしたら…って可能性が見えたの。だから有難う…絢華さん」

