気付けば、君の腕の中。



お、美味しい…!!

おにぎりを握ったのは清水さんだったから、食べるのが楽しみだったのだ。

昆布が丁度いい塩加減で味が染みている。


「お母さん…、やっぱり私の好きな昆布ばかり握るのね…」

「えっ、そうなんですか? 美湯さん、昆布派なんですね」


確かにこの昆布のおにぎりなら、あたしだって毎日食べても飽きないと思う。


「…いつからかしら。お母さんと向き合うのが怖くなったのよ…」

「美湯さん…」

「私の部屋を見て、片付けなさいって言ってきたり、掃除したらどうなの、とか当たり前の言葉にイラついてしまって…」


美湯さんが俯いたときに、彼女の綺麗な黒髪が寂しげに揺れたように見えた。