(Side:絢華)
あたしを抱きしめた凜くんは、すぐに体を離した。
ぼろぼろと涙を零すあたしを見て、凜くんも一瞬だけ顔を歪めた。
けれど、すぐに俯くと、あたしの手を引いて歩き出す。
何も言わずに凜くんの後ろを歩くと、また涙が零れ落ちてしまった。
…どうして、ここに凜くんがいるのか、結局聞けていない。
五十嵐くんが言っていた「貸し、二つにしてやったから」という言葉が引っかかった。
恐らく一つは踊りを教えてくれたことだろう。
じゃあ…、あと一つは凜くんに迎えを頼んだこと?
どうして五十嵐くんが、そんな行動を取るのか―全く分からなかった。