…絢華の頭を撫でようかと思った。
五十嵐が触れているのが気に入らなくて、俺の手のひらで上書きをしたかった。
だけど、触れようとすればするほど、震えが止まらない。
「絢華…」
教室の中は、殆どのクラスメイトが集まり、がやがやとしていた。
そんな中で、俺の声は絢華の耳に届いたのだろうか。
臆病な俺は頭を撫でることが出来ず、前を向くと息を吐いた。
「…何、やってるんだろ」
ちらりと横目で五十嵐を見ると、彼の視線は俺に向けているように見えた。
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