不思議に思って「凜くん?」と呼べば、少し長い凜くんの前髪が風でなびいた。
「…友達、そうだよね」
「?」
風のせいで声が聞こえづらい。
空を見上げて、段々と日が落ちてきたのを確認すると、凜くんの傍へ近寄った。
「凜くん、やっぱり鍵がないの?
だったら、お母さんとお姉ちゃんは今日帰らないと思うから、家に来る?」
優しく頭を撫でると、不意に凜くんが顔を上げた。
「? 凜く―…」
「…絢華」
優しく熱があたしの唇に触れて、ゆっくりと離れていった。
「……ごめん」
それがキスだと気づいたときには、凜くんはいなくなっていた。

