それよりあたしは家族を取り戻すのに必死だった。
奈々美は、あたしの家庭事情を知っているから、あまり恋愛をしつこく勧めてこない。
「…それより奈々美はさ、彼氏欲しいとか思わないの?」
「うーん、うちは高校生になってからって決めてるんだよね」
彼女らしい答えに曖昧な頷きを返した。
きっと奈々美なら、高校生になってもモテるんだろうなあ。
ここ最近では、一ヵ月内に何人かの後輩や同級生に告白されていた。
卒業が近いから、みんな必死なんだろう。
「絢華ー、どーした?」
「えっ、ううん! 何でもない」
怪しいと呟く奈々美に苦笑いをして、これ以上誤解させないためにも、男の子に話しかけるのは止めておこう。