「全くあんたは俺の気ばかり引くな」


いきなり言い放たれた言葉に唖然とした。

私がドクターの気を引いてる?
どうして?いつ?


吸い込んだ息がポカンと開いた口先から逃げてく。
よっぽどマヌケな表情でいたのか、ピシッと額を指で弾かれた。


「心臓が痛くねーなら帰るぞ!」


そう言うと、斜め後ろにあるシートベルトを引っ張ろうとした。


「先生!」


声をかけると振り向くドクター。
胸の音はさっきよりも大きく響いて体の芯が疼くように感じる。


「あの…それ、どういう意味ですか!?」


まさか、彼も私を…?


そう思えてしまい、事実かどうかを確かめてみたいと思ったんだけど……


「あ?単純に気になる患者って意味だけど」


メーワクな、とまで付けられ、やっぱり…と気落ちする。


(私はドクターにとって恋愛の対象にもならないのか……)


そう思うと、ようやく盛り上がってきた勇気も萎んでいく__。



「ですよね」


じわっと目頭が熱くなった。
告る前から失恋決定。
分かってたことだけどツラい……。



「何だよ。その納得は」