真面目ぶった顔の唇が開く。
隙間から見える前歯が白くて、きゅん…と胸が軋んだ。



「終わったぞ。今夜はもう酒を飲むなよ」


そう言われて目線を下げれば、ホントにもう巻き終わってる。端っこもテープで留められて、動かしても痛くない。


「…どうも、ありがとうございました」


昨日に引き続き…って、この間からずっとか。
目線を上げると彼の顔は離れてて、それに少しだけガッカリした。


包帯の残りを手にしたドクターは処置台に向かい、送ってやるから…と言ってくる。



「いえ、いいですよ!」


そんなの申し訳ない。
今日もまた時間外労働させたのに。


「歩けますよ。もう痛くないし」


「昨日そう言って帰ったのに悪化させた奴が言うセリフか?」


呆れ気味な口調で話しながら戻ってくる。

今日はあの女神みたいな美女はいないけど、彼の周りにはやたらと大人女子が多いと知ったし……。


(ここで送られると、また子供っぽさが増す気がする)


張り合っても彼女達のようになれる自分じゃない。
だったら、なるだけドクターに迷惑を掛けたくないんだが……。