彼の仕事は、音響関連会社のエンジニア。

このミュージックセンターに入っている電子楽器、アンプ類の定期点検や修理、
他の大きなホールを借り切って行われる発表会やライブなどの音響の仕事等に派遣されて来る…そういう立場だ。



前の担当者が言っていた。
「近々転勤になるので、担当が別の者に代わります」
…と。

まさか、それが “彼” だったとは…。
関連会社にいたなんて、全く知らなかった。



不思議な感覚だった。

心に甘く切ない痛みが走った後、清々しい風が通り抜けたような感覚がしたのだ。