この時間は、未就学児のグループによるリトミック教室のレッスンがある。
女の子ばかりの中で二人だけの男子なので、この二人はとても仲が良い。

「コウちゃん!もうすぐ始まるんだから、そっち行かないの!」

レッスン室やスタジオが入り組んだ廊下へ探検に行こうとする二人に、母親の声が飛ぶ。



生徒がたくさん居る中、名前に反応してしまい、一人で苦笑いする事もあった。
『コウ』なんて呼び方は、いくらでもあるのに。


彼も幼い頃は、あんなだったのかな…
いや、あの落ち着きがなく人を引っ張って行くタイプは光井先輩だな…
彼はどっちかと言えば、落ち着いて穏やかなもう一人のヒロくんの方かな…
などと考え、頬が緩むような事もあった。


ギターケースを肩に担いだ大学生がスタジオを借りに来ると、似た髪型や体型の人に、彼の姿を重ねたりもした。