ふらふらと新幹線のホームに上がり、行き先と時刻が表示されるパネルを見上げる。

「なんだ…まだ二時間もある…」

彼と暫く病室で過ごして、別れを惜しんでから帰るつもりが、一瞬で飛び出して来てしまったので当然だった。
そんなことを考える余裕もなく、ここまで帰って来てしまったのだ。


どこかでお茶を飲んだり、買い物をして時間を潰す気力もなく、待合室の椅子に座り、入れ替わる人達を虚ろな目で何人も見送りながら時間を費やした。



バッグの中で何度も鳴り響くバイブ音に、やっとスマホを手に取る。


“ これ ” が離れている私達をずっと繋いでくれていた…

会えない間、何度も彼の声を聴き、彼の気持ちを感じる事ができた…。


とてもとても大切なものだった。



でも…でも…


私は、様々な想いを全て断ち切るように、スマホを握り締めるようにして、電源を落とした…。