「お願いがあります」 彼女の白くしなやかな掌に、私は貰ったばかりの合鍵をゆっくりと乗せる。 私の宝物になる筈だったそれは、私の躊躇いなど素知らぬ振りで、私の指先をするりと離れた。 「これを彼に…。……彼のことを…」 “ お願いします ” と言おうとした言葉は、喉につかえて出て来なかった。 たった一日一緒にいて世話を焼いただけで、彼の役に立った気でいた。 彼女はずっと彼の側にいて、彼を支えて来たのかも知れないのに…。