「幸…お願い。一度だけでいいの。私を抱いて」

驚いた彼は、返事に困って、私の目の奥に答えを探そうとする。

「結婚を決めた人がいるのにこんな事言うなんて、貴方にも彼女にも、とても卑劣な事をしてるって思う。でも…」



「美織…それはできない」

誠実な貴方は、静かにそう言った。


私との間に未来はない…
それがわかっているから、私を引き返させる為の優しさ?

ううん…そうじゃない。
貴方の隣に寄り添う彼女を、悲しませない為の誠意。


でも…もうどっちでもいい。
私はとっくに悪女に成り下がっているから…。


とても辛そうに私を見つめる彼。
そんな彼を私はもっと追い詰める。