後にも先にも親父の涙を見たのがこれが初めてのであり、唯一といっていいだろう。















親父は普段涙なんか見せるような人ではないからだ。














親父は言ってはいないと言った。














だが「知ってはいない」とは言わなかった。

















お袋はとても感が鋭い。















もうとっくにそんなこと悟っているのかもしれない。
















どこかお袋のあの笑顔ぎこちなかった。















口元は笑っているが、目元は笑っていなかったのだ。















今頃お袋も部屋で同じように泣いているのかもしれない。
















そう思ったのだった。