私は長い入院生活から少しだけ解放されて學校へ行く許可が下りた。
久々の外。自然豊かなところに建つ蓮花學院中等科に通う私、綿月 沙彩(わたつき さあや)。學校の屋上からはこの町が一望でき、私が入院してい蓬花総合医療センターも見える。

今日は雲1つない青空でとても暖かい。校庭に咲く満開の桜に目を向ける。そんな時、後ろから声がかかった。

「ねぇ、きみ、綿月さんでしょ?俺と友達になろうよ。」

無邪気なそして男の子にしては少し高い声。彼のほうを見ると、やわらかそうな栗色の髪を春の風になびかせて、端正な顔の少年が可愛らしく微笑んでいた。
急に声をかけられて戸惑いを隠せない私。
彼は私の戸惑いを気にすることなく私の手をとった。

「えっ?」
「友達ね。宜しく。俺、3年2組、前崎 宇詩(まえさき うた)。」

勝手に友達呼ばわりする彼。でも中学生になって初めての友達で少しうれしかった。
1週間限定の學校。1週間後私はまた病院のベッドに戻る。次学校に来る頃、彼は私のことを忘れているだろう。1週間という短いような長いようなあいまいな時間の関係。彼には身体のことは話せない。
彼と言葉を交わしている間、私の心はそう決意した。