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「さっびー…」


俺は両手をジャケットのポケットに入れ、肩をすぼめながら夜道を歩く。

今日は俺の歓迎会だったんだけど…

学校の先生ってあんなにも酒に弱いものなのか?

俺の歓迎会をしてくれるのは嬉しいけど、もうちょっと普通は呑めるだろ?

皆んな酔ってヘロヘロになってたけど、俺はまだ全然、呑み足りねーよ。

…しゃーね、リュウのところにでも呑み直しに行くか。

俺はコンビニで酒とツマミを買って、親友である神部 龍(かんべ りゅう)の家へ向かった。

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「相変わらずデケーな…」

久しぶりに見るリュウの家を見て呟く。

デケー門扉に何台もの監視カメラ。

車を何台停めれるんだよってくらいの車庫。

ガチャン…という音と共にデカイ門扉が自動で開く。

俺は監視カメラに向かって片手を挙げ、挨拶をしてから門をくぐった。

木々に囲まれた長いアプローチを歩いて玄関に着くと、リュウとその子分達が俺を出迎えてくれる。

「いらっしゃい、瀬良先生」

長めの黒髪に眼鏡の男が俺に向かって言った。

「うるせーよ、リュウ」

俺はリュウに軽く肩パンを入れる。

「いらっしゃいやしっ、雄大さんっ」

子分達が俺に頭を下げて言った。

…そう、ここは、神部組。

まぁ、平たく言えばヤクザの家。

リュウはこの神部組の三代目だ。

「俺にまで挨拶いいっすよ」

「いえっ、雄大さんは三代目の大事な客人ですからっ」

そう言って子分達は深々と頭を下げた。

「ヤス達はもう下がって下さい」

リュウが言うと「へいっ、失礼しますっ」と子分のヤス達は素早く去っていく。

「雄大はとりあえず、中に入って下さい」

リュウは俺を自分の部屋に案内した。

俺は部屋に入り、大きな窓際にあるテーブルの上にさっきコンビニで買ってきた酒を置く。

「歓迎会だったんだけど、全然、呑み足りなくてよ。リュウ、付き合えよ」

「フッ、いいですよ。雄大は、酒豪ですからね」

「缶ビールで悪いな」と言ってリュウに渡してから、カシュッと自分の缶ビールを開ける。

カツンッ…とお互いの缶を軽く当ててからゴクゴクとビールを飲んだ。

「ーーーで、どうだったんですか?学校のほうは」

「あー……、なんか気になる女がいた」

「雄大が一目惚れなんて珍しいですね」

「バーカ、ちげーよ。なんか危うい女」

「どういう意味ですか?」

「顔色が悪くって、やたらに体重が軽いんだよな。アイツ、なんか抱えてるんじゃねーかな?」

「それは気になりますね…。雄大はどう考えてるんですか?」

「…家庭に何かあんじゃねーかと思ってる。これは、俺の勘なんだけどよ。なんかアイツ、俺と同じ匂いがするんだよな」

「…親ですか?」

「ああ」

「恩師との約束、守って下さいよ」

「わかってるよ」

俺はビールをゴクゴクと一気に飲み干した。