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逃げるように教室を出てきた私は、保健室の前まで来て固まったように立ち止まる。

まただ……

また、雨宮先生が来てる。

保健室のドアが少し開いていて、たまたま中の様子が見えてしまった。

しかも、今日の雨宮先生のシャツは胸元が大きく開いていて、瀬良先生の目線の高さからだったら、胸の谷間が見えていてもおかしくないくらいだ。

「雨宮先生、本気で落としにいってるね」

突然、背後から声を掛けられ驚いて振り向く。

「…牧野くん」

「ごめん、追いかけてきちゃった」

ハハ…と苦笑いをしながら、こめかみをポリポリとする牧野くん。

「教室へ戻って下さい」

私はクルッと方向転換して、その場を立ち去ろうとした。

「待って、藤崎さんっ」

牧野くんの声が静かな廊下に響き渡る。

私の手首を掴み引き止めた牧野くんは、とても切なそうな顔で私を見つめて




「僕っ、本当に君のことが好きなんだっ」



牧野くんの告白が、また静かな廊下に響き渡った。

「なっ//////⁈」

今度のは冗談だと思えなくて、どう対応していいのか分からない私はアタフタとしてしまう。




「僕と付き合って下さい」




追い討ちをかけるように告白してくる牧野くん。

「い、いや、ちょっ、ちょっと待って…」

驚き過ぎて何も考えられないよっ///

私が固まったままでいると

「二人ってそういう関係だったのね」

気付けば保健室から雨宮先生がヒョコッと顔を出していた。

「な、ち、違いますっ///」

瀬良先生に誤解されるようなこと言わないでよっ。

「まぁ、照れちゃって可愛い」

だからっ、違うって!

雨宮先生ってば、絶対に瀬良先生に誤解されるようにワザと言ってるっ。

「牧野くんと藤崎さん、美男美女で私はとてもお似合いだと思うわ。ねぇ?瀬良先生」

ニッコリと笑顔で隣にいる瀬良先生に言った。

瀬良先生は何て答えるの?

「お似合いだ」とか言われたら私………

私は不安な気持ちで、瀬良先生のことをじっと見上げる。

「お前ら教室へ帰れ。もうすぐチャイムが鳴るぞ」

と表情を変えないまま、私と牧野くんの背中をポンと軽く押した。

「逃げるんですか?瀬良先生」

そう言った牧野くんは、振り返り瀬良先生に鋭い視線を向けている。

「は?何言ってんの、お前」

呆れたような顔で瀬良先生が牧野くんに言った。

「僕には瀬良先生が藤崎さんを特別扱いしてるようにしか見えません。瀬良先生は藤崎さんのことを…好きなんじゃないですか?」

「ま、牧野くんっ!変なこと言わないでっ!」

私は牧野くんの腕を掴みながら、思わず叫んでしまう。

「藤崎さんは、瀬良先生の気持ち聞きたくないの?」

牧野くんは腕にある私の手をぎゅっと握りながら言った。

「べ、別に、私には関係ないっ」

そんなのっ、私のことなんてどうも思ってないに決まってるじゃないっ。

フラれるだけだよっ。

「あら、私も是非、聞きたいわ」

雨宮先生が、瀬良先生の腕に自分の腕を絡めながら言った。

私以外の視線が瀬良先生に集まる。

「…くだらねー。好きだの何だのって、教師と生徒の間でそんなのあるわけねーだろ。わかったら、サッサと教室へ戻れ」

瀬良先生は溜息をつきながら、雨宮先生の腕を外し、手をヒラヒラとしてから保健室へ入っていった。

「まぁ、瀬良先生ってば冷たいのね。でも、当然よね?さすがに教師が生徒に恋愛感情を持つはずが無いわ」

雨宮先生が勝ち誇ったような笑顔を私に向ける。

…わかってたよ。

私だって、瀬良先生がこっちを向いてくれるなんてこと無いって初めからわかってたわよ。

頭ではわかってるけど…

実際に本人の口から聞いてしまうと…

キツイ………。

思っていた以上に胸が苦しくて悲しくて…気を抜けば涙が溢れそうになる。

人前でなんて泣きたくないっ。

私はその場を逃げるように走り去った。