リボンと王子様

「……俺の話は終わり。
破損もしていないし、葛さんの責任も何もない」

「……ですが……禁じられていたことを……」

「不可抗力だろ。
その代わりに俺の話を聞いてもらったんだからそれでチャラ、な」

「……でも」


尚も言い募ろうとした私は鋭い視線で一蹴された。


「腹減っただろ。
何か食べに行くか」


玄関に向かおうとする千歳さんを私は引き留めた。


「いえっ。
私の不注意が引き起こしたことなので……そこまでしていただくわけにはいきません。
……本日はこれで帰らせていただきます……もし、響様にお許しいただけるなら、明日からまた勤めさせていただきます……」


千歳さんはヤレヤレというように肩を竦めた。


「……頑固だな、全く。
勿論、これまで通りに勤務してもらう、それでいいだろ?
ただし、足が酷く痛んだりするなら休めよ」


千歳さんの言葉に私は満面の笑顔で頷いた。


「……響様?」


不意に視線を外した千歳さんの顔を覗きこもうとしたら。

バッと片手で口を覆って千歳さんは背を向けた。


「……とりあえずもう遅いから送る。
車出してくるから、ロビーで待ってろ」


それだけ告げてバタン、と出ていった。