「……それは俺だから?」
一瞬、瑞希くんの瞳に宿った熱くて切ない光。
けれど、瑞希くんはすぐに瞳を伏せた。
「え?
そうだよ、だって瑞希くんは私の大切な人だもん!
いつも一緒にいてくれたでしょ?
だから居なくなるのはすごく寂しいよ」
ガタンと身を乗り出すように話した途端。
腰の後ろに置いていた、社内での私物鞄を地面に落としてしまった。
「あー……やっちゃった……」
幸い中身は財布とポーチ、リップ、タオルくらいで、派手に散らばることはなく助かったけれど。
それでも恥ずかしいことには変わりなく、慌てて拾う。
「大丈夫か?」
瑞希くんも一緒に屈んで、化粧品を入れているポーチを拾ってくれた。
このポーチも瑞希くんが以前ホワイトデーにプレゼントしてくれたものだ。
淡いピンクの生地にシルバーのリボンが付いていて、とても可愛い。
鞄を拾うことに集中していた私は。
「……その気持ちが男として、だったらいいんだけどな」
ボソッと呟いた瑞希くんの言葉が聴こえていなかった。
それからは他愛ない話をして。
瑞希くんの見送りに行く話をして。
帰りは瑞希くんが会社の前まで送ってくれた。
「穂花、何かあったらすぐに連絡しろよ?
すぐに帰ってくるから」
「大丈夫、私ももう大人なんだから。
それにニューヨークから帰ってくるのは大変だよ?」
「穂花のためなら、すぐに帰ってくるよ」
優しい笑顔で、瑞希くんはクシャッと私の頭を幼い頃と変わらない大きな手で撫でてくれた。
それから一瞬、切ない表情を見せた。
「……瑞希くん?」
「何でもない、心配だなあと思っただけ」
「もう、だから大丈夫だってば」
クスクス笑う姿はいつもと同じ瑞希くんだったけれど。
一瞬見えた表情が何故か心に残った。
その後、瑞希くんは予定通り旅立った。
一瞬、瑞希くんの瞳に宿った熱くて切ない光。
けれど、瑞希くんはすぐに瞳を伏せた。
「え?
そうだよ、だって瑞希くんは私の大切な人だもん!
いつも一緒にいてくれたでしょ?
だから居なくなるのはすごく寂しいよ」
ガタンと身を乗り出すように話した途端。
腰の後ろに置いていた、社内での私物鞄を地面に落としてしまった。
「あー……やっちゃった……」
幸い中身は財布とポーチ、リップ、タオルくらいで、派手に散らばることはなく助かったけれど。
それでも恥ずかしいことには変わりなく、慌てて拾う。
「大丈夫か?」
瑞希くんも一緒に屈んで、化粧品を入れているポーチを拾ってくれた。
このポーチも瑞希くんが以前ホワイトデーにプレゼントしてくれたものだ。
淡いピンクの生地にシルバーのリボンが付いていて、とても可愛い。
鞄を拾うことに集中していた私は。
「……その気持ちが男として、だったらいいんだけどな」
ボソッと呟いた瑞希くんの言葉が聴こえていなかった。
それからは他愛ない話をして。
瑞希くんの見送りに行く話をして。
帰りは瑞希くんが会社の前まで送ってくれた。
「穂花、何かあったらすぐに連絡しろよ?
すぐに帰ってくるから」
「大丈夫、私ももう大人なんだから。
それにニューヨークから帰ってくるのは大変だよ?」
「穂花のためなら、すぐに帰ってくるよ」
優しい笑顔で、瑞希くんはクシャッと私の頭を幼い頃と変わらない大きな手で撫でてくれた。
それから一瞬、切ない表情を見せた。
「……瑞希くん?」
「何でもない、心配だなあと思っただけ」
「もう、だから大丈夫だってば」
クスクス笑う姿はいつもと同じ瑞希くんだったけれど。
一瞬見えた表情が何故か心に残った。
その後、瑞希くんは予定通り旅立った。

