それから更に一週間程が過ぎて。
夏も終わりに近付く。
暑さはまだまだ続いているけれど、ほんの少しだけ日が落ちる時間が早くなった。
蝉の鳴き声もあまりきかなくなった。
何も変わっていないようで季節は確実に移ろいでいる。
確実に時間は過ぎていく。
一日の業務をあらかた終えて、一時間ほど前に出した紅茶のカップをさげるため、社長室に向かった。
社長室の大きな窓の向こうに広がる空は薄暗くなっていた。
公恵叔母さんは電話をしていて、傍らには松永室長がいた。
カップをさげて部屋を退出しようとする私に公恵叔母さんが声をかけた。
「穂花ちゃん、申し訳ないのだけれど」
「社長。
葛城さん、です」
すかさず松永室長が訂正する。
「もう、細かいわね。
いいじゃない、就業時間はもう終わりなんだから」
松永室長に向かって公恵叔母さんが顔をしかめた。
「これからお客様がいらっしゃるの。
悪いんだけど、栄和堂の上生菓子を買ってきてくれないかしら」
「ご来客ですか?
畏まりました。
準備をいたします」
「ああ、いいのよ。
そんなに畏まったお相手じゃないの。
私と松永室長だけで対応できるから、穂花ちゃんはおつかいの後、退社してね」
反射的に松永室長を見ると、松永室長は無言で頷いた。
夏も終わりに近付く。
暑さはまだまだ続いているけれど、ほんの少しだけ日が落ちる時間が早くなった。
蝉の鳴き声もあまりきかなくなった。
何も変わっていないようで季節は確実に移ろいでいる。
確実に時間は過ぎていく。
一日の業務をあらかた終えて、一時間ほど前に出した紅茶のカップをさげるため、社長室に向かった。
社長室の大きな窓の向こうに広がる空は薄暗くなっていた。
公恵叔母さんは電話をしていて、傍らには松永室長がいた。
カップをさげて部屋を退出しようとする私に公恵叔母さんが声をかけた。
「穂花ちゃん、申し訳ないのだけれど」
「社長。
葛城さん、です」
すかさず松永室長が訂正する。
「もう、細かいわね。
いいじゃない、就業時間はもう終わりなんだから」
松永室長に向かって公恵叔母さんが顔をしかめた。
「これからお客様がいらっしゃるの。
悪いんだけど、栄和堂の上生菓子を買ってきてくれないかしら」
「ご来客ですか?
畏まりました。
準備をいたします」
「ああ、いいのよ。
そんなに畏まったお相手じゃないの。
私と松永室長だけで対応できるから、穂花ちゃんはおつかいの後、退社してね」
反射的に松永室長を見ると、松永室長は無言で頷いた。

