「じゃあな、兄貴。
身体に気を付けて。
穂花ちゃん、俺、その辺りにいるから兄貴を見送ったら一緒に帰ろ。
家まで送る」


舞花に言われているのか、いつも以上に樹くんも私を心配してくれている。

樹くんはニコッと屈託のない笑みを浮かべている。


「いいよ、一人で帰れるから。
樹くん、今日は大学は?」

「俺、今日は四講目からだけだから。
一緒に帰ろ」


太陽の光のように明るく染めた髪に、瑞希くんによく似た優しい瞳。

幾分、少年らしさを残した輪郭。

それでも私よりは遥かに背が高く、骨格もしっかりしている。


「でも……」


言い淀む私に。


「……穂花。
気にしなくていいから、帰りは樹に送らせてやって。
俺より下手だけど、安全運転するように言ってあるから」

「……兄貴、一言余計なんだけど」


二人のやり取りに吹き出した。

連絡して、と言う樹くんの後ろ姿を見送る私に。

瑞希くんが話しかけた。


「……今日は来てくれてありがとう。
まさか来てくれると思わなかった」

「ううん。
……瑞希くんに話したいことがあったから」

「……カフェにでも行こうか」


歩き出そうとする瑞希くんの腕を引っ張った。


「ううん。
瑞希くん、飛行機見に行こう?」


明るく言って、飛行機がよく見える屋上スペースに二人で移動した。