カチャカチャ……。


瞼の裏に明るい光を感じる。

耳に届く、心地よくて安心する音。

懐かしくて、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。


何だろう…。

重たい瞼をうっすらと開ける。


「お姉ちゃん!」


視界に飛び込んできた、心配そうな大きな瞳。

心なしか潤んでいるように見える。


「……舞花?」

「よかったぁ、もうビックリしたよ!」

「ど……して、舞花が……」


ズキンッ。


起き上がろうとすると頭に鈍痛が走った。

額を手で軽く押さえる。


「……泣きすぎだよ、お姉ちゃん。
目、パンパン」


ゆっくり起き上がって周囲を見渡すと、そこは見慣れた私の部屋だった。

……そうか、私、千歳さんと話して……泣きながら寝てしまったんだ。

意識を手離したことを思い出す。


「……千歳さんと何かあった?」


心配そうに尋ねる舞花。


「え……?」

「……今朝、蘭から電話があったの。
お姉ちゃんが体調を崩しているかもしれないから、様子を見に行ってほしいって千歳さんから言われたって」

「……千歳さんが……?」

「何回電話しても電話に出ないし、本当に心配したんだよ。
慌てて部屋に入ったら、ベッドに倒れこんでるし!
寿命が縮まったよ……無事でよかった……」


泣き出しそうな舞花の顔を見て、心配をかけてしまったことを痛感した。


「……ごめんね、舞花……」


素直に謝ると。

舞花が泣き笑いみたいな表情を見せた。