リボンと王子様

「……最初から不自然だとは思ってた。
母さんが俺と歳の近い女性を雇うなんて。
余程の信用があるか、深く知っている人かどちらかだろうと思ってた。
でもまさか穂花だとは思っていなかったよ」

「……じゃあどうして……」

「葛さんの姿は変装だと思ったから」

思わず息を呑む。

「葛さんの髪に触れた時。
ウィッグだってすぐにわかった。
一応美容関係の業界に属しているからね。
それからカラーコンタクトにも気付いた。
度数付きのものもあるのに眼鏡をかけていることに違和感を感じた。
……それからすぐに穂花に再会した」


そんなにすぐに見破られていたなんて。

バレていないと思っていた私はどれだけお気楽だったんだろう。


「穂花に再会した時。
最初はただ嬉しかった。
だけど、既視感を感じた。
その話し方や雰囲気に。
四年前より、もっと最近に会ったような……そんな気がした」


一瞬だけ、本当に一瞬だけ千歳さんの闇色の瞳に哀しみの色が見えた。


「……穂花を抱きしめた時、すぐに気が付いたよ。
穂花と葛さんからは同じ香りがした。
偶然かとも思った。
だけど……葛さんと穂花の背格好、掴んだ腕の感触。
全てが穂花と同じだった。
……穂花を好きな俺には簡単なことだったよ」