リボンと王子様

「そうだったのね……」


フウと一息ついて有子おばさまは華奢な手で紅茶のカップを持ち上げた。


「再会してすぐにわかったの?」

「いえ、すぐには確信できませんでした。
ただ……私は千歳さんに無意識に惹かれていたんだと思います」


誰もが目を奪われる程の秀麗な顔立ちと一見、冷たくみえるその闇色の瞳だけれど。

その乱暴な言い方の奥にある優しさに。

相手を大切に思う、思いやり深さに。

人として、一人の男性として惹かれた。


千歳さんの母である有子おばさまに、こんなに赤裸々に気持ちを伝えてよいものかわからなかったけれど、正直に答えた。


「そう、ありがとう」


有子おばさまはそう言って優しく微笑んだ。


「ねえ、穂花さん。
お手伝いさんの件は私から千歳に話しましょうか?
私が頼んだことだし」


心配そうに気遣ってくださる有子おばさまの申し出に、小さく首を横に振った。


「ありがとうございます。
でも……私から話します」


そう、甘えてはいけない。

私が話さなければ。

その瞬間。