リボンと王子様

私の言葉が意外だったのか、有子おばさまは少し驚いた表情を浮かべた。


「千歳に？
それは構わないけれど……千歳とあなたの仲がこじれるんじゃないの？」

「それでも構いません。
……仕方ないことだと思っています」

「……穂花さんは不器用なのね」

何故だか満足そうに有子おばさまは微笑んだ。

私は意味がわからなくてどう反応をすればよいかわからなかった。


「ああ、いいの。
気にしないで。
ねぇ、でもひとつ聞かせてくれないかしら？
あなた達は小さい頃から会っていなかったでしょう？
どうして急に二人の関係が変わったの？
千歳の何に惹かれたの？」


尋ねられて。

誤魔化すことはできた。


今の私が惹かれた理由だけを答えることもできた。

けれどそうしたくなかった。


もう誰にも。

千歳さんとのことで嘘をつきたくなかった。


「……千歳さんと私は四年前に一度お会いしてるんです」

「四年前？」


私は四年前、屋上庭園で千歳さんに出会った話をした。

その時は千歳さんだとは気がつかなかったこと。

名前も何も尋ねず、知らなかったこと。

無意識に惹かれ、探し続けていたこと。

その時の想いを有子おばさまに伝えた。