リボンと王子様

有子おばさまの態度は先刻と変わらない。

穏やかな表情もそのままだ。


それが逆に私を落ち着かなくさせた。

緊張が一気に押し寄せてくる。

言葉が喉に絡み付いて、話したい言葉がすんなりと出てこない。

震えそうになる手を膝の上でギュッと握りしめる。


「……有子おばさま……も、申し訳ありません。
私……これ以上お手伝いさんを続けることができません」

「どうして？」


間髪入れずに聞き返される。

有子おばさまは私の瞳をジッと見据えたまま、逸らさない。


「……これ以上千歳さんに嘘をつきたくないんです」

「嘘？」

「葛城穂花だということを隠したままで、お手伝いさんを続けていることです。
千歳さんは私とお手伝いさんの葛花穂を別人と思って接してくれています。
それに……お手伝いさんとして雇用された本当の理由もご存知ありません」

「千歳に特別な女性がいるかどうかを調べてほしいって私が頼んだこと？」


冷静に有子おばさまは言葉を紡ぐ。


「……穂花さんが千歳の特別な人なのに？」


有子おばさまの言葉にビクッと肩が震える。