リボンと王子様

有子おばさまと蘭ちゃんの反応に、一番動揺したのは私だった。


……決して、反対してほしかった訳じゃなく。

ただ、ここまでアッサリ受け入れられることに拍子抜けしてしまう。


「千歳は強引でワガママなところがあるから、大変だと思うけれどよろしくね、穂花さん」


嬉しそうな目映い笑顔を有子おばさまに向けられて。


「……い、いえ、私の方こそ千歳さんには甘えてばかりで……」


しどろもどろになって返事をすることが精一杯だった。

当の千歳さんをチラリと盗み見すると、これまたいつもと変わらない態度。


……この親子には緊張とかないの?


そんなことを考えながら、自分の手元に視線を落とした。


……有子おばさまは千歳さんと私が付き合うことをよく思っていらっしゃらない筈なのに。

その考えだけはどうしても捨てきれなかった。


眼前に座る有子おばさまは終始ご機嫌で。

私達の交際を反対している気持ちを隠しているようにも見えなかった。

タイミングよく運ばれてきた追加のパンケーキに嬉しそうに舌鼓を打っている。


蘭ちゃんはそんな有子おばさまを呆れたように見つめていて。

本当に甘いものが好きだな、と千歳さんは有子おばさまに話しかけていた。


傍目にはとても幸せな穏やかな光景。

だけど私だけが、何処か異世界からその光景を見ているような、そんな気がしていた。