「……折角だから出掛けようか」


千歳さんが体を離して、不意にそう言った。

今日は土曜日。

千歳さんも仕事が休みらしい。

暑さが厳しいことに変わりはないけれど、窓の外には憎らしいくらいの青空が広がっている。


「穂花がこの間、行きたいって話していたパンケーキの店に行ってみる?」


いつもと変わらない口調。

その様子にホッとしながらも心がチクンと痛む。


「……うん、行きたい!」


ごめんなさい、千歳さん。

有子おばさまと瑞希くんにきちんと話をするから。

それから本当のことを話すから。

それまでどうか。

私の嘘に気付かないで。


……勝手な言い分だってわかっている。


でもどうか、もう少しだけ。

大好きなあなたの傍に、このままでいさせて。

心の中で何度も謝罪をして、私は彼に笑顔を見せた。