「……舞花。
私……お手伝いさん、辞めるよ。
きちんと有子おばさまに話して……今までのことを千歳さんに話すよ」


ギュッと唇を噛み締めた。


瑞希くんも千歳さんも真っ直ぐな想いをぶつけてくれた。

舞花も樹くんへの恋に頑張っている。

甘えてばかりはいられない。


……逃げて先伸ばしにしていてもなにも変わらないから。

恐がらずに一歩、前に踏み出さなきゃ。


本当は震えそうに怖い。

後先考えずにお手伝いさんを引き受けなければ良かったと思ってしまう。

だけどそうしたら千歳さんには再会できなかった。


こんなに誰かを愛しく思う気持ちを知らずにいた。

だからこれは。

私にとってとても大切な出来事で出会いだった。


それを大切にしなければならない。

そのためにも向き合わなければいけないことがある。


私の決意を感じたのか、舞花が笑って大きく伸びをした。

私より五センチメートルは高い身長が更に高くなる。


「じゃあ私も片想い、もうちょっと頑張るよ。
どうしたって樹を嫌いになれないもん。
あーあ、もう告白しようかなぁ……」


項垂れる妹に。


「……お互いフラれたら慰め大会しようね」


そう言って努めて明るく、笑いかけた。