葵くん、そんなにドキドキさせないで。



顔を覗き込むと、目を見開いて。





「っ、バカ……煽んな」





目をそらしたかと思えば、グイッと私を引っ張った。


か、風邪を引いてるのにどこからそんな力が出るの?



パタンとしまったドアの音を聞きながら、そんなことを頭の中で考える。




玄関で私のことをギュッと抱きしめる葵くんは、本当に熱くて。





「葵くんっ、熱高い!」


「田中さんのせいだよ、俺のことどうしたいわけ……」


「か、看病したいのっ」





ぐったりとしてる葵くんを寝室まで運ぼうと廊下をのそのそと歩く。





「あー、田中さんの匂いがする」





鼻をすり寄せる葵くん。


こうやって甘えてくるのも、熱のせい?



一つだけドアが開けっぱなしだった部屋を覗くと、ベッドがあった。