「……あのさぁ、」
掠れた声でそう言った葵くんは、またため息をついて。
「親がいないってことは、俺と田中さん2人っきりてことだけど」
「うん、分かってるよ?」
「分かってねーだろ、それ。腹立つー……」
顔をしかめて、ゴツンとドアに額を当てた。
「風邪引いてる時ってさ、」
「え?」
ゆっくりと腕を伸ばして、私の首筋をそっと触る葵くん。
「うまく理性をコントロール出来ないわけ」
そのまま、その手を上に動かして、今度はほっぺたをスルリと撫でた。
「田中さんのこと襲うかもしんねぇけど、いいの」
「おそっ……!?」
葵くんのとんでもない発言に、風邪のせいで二割り増しの色気に、
みるみる顔が熱くなっていく。

